中学校の同級生がたくさん登場して、グラウンド、サッカー、運動会、スローガン、オキシトシン、世界大会、お前には苦い思い出だもんな、枯れ草。

そんな夢を見ながら目が覚めた。

いつものように角膜が乾いている。やけに体が冷えると思ったら、掛け布団がベッドの端に追いやられていて、その上朝方の暖房は機能していないようだった。起床とは誕生なのかもしれないと思う。

自由の効かない体を起こして冷たい空気を泳ぎ、充電してあったスマホを手に取って布団に戻った。しばらく世界の明るさに目を慣らしてから画面を見始める。送信取り消しが2件と猫耳の顔文字が1件。どちらも寝る前に通知を見て放置したものだったから、目新しさのない朝になった。

木村善彦『アイロニーはなぜ伝わるのか?』を読む。僕は人文科学全般に対して非常に懐疑的である。実験を伴わない推論を言葉遊びで糊塗したものを、必要以上に持て囃しているだけの分野に過ぎないという認識を払拭できないからである。だが、この本はそう言った人文科学的な誤謬さえも包括する、高次元から批評を行っているように思える。修辞はどのようなメカニズムで表層的なものとは裏腹な意味を包含するのか、そしてそれはどのように会話や文芸において用いられているのか。